火垂るの墓の全セリフ

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 昭和20年9月21日夜 ぼくは死んだ

おっとと きたない ヤツっちゃなぁ

オイ! 気ぃつけんかい

きたないなぁ

死んどんのやろか

アメリカ軍がもうすぐ 来るいうのに―

恥やでぇ 駅にこんなんおったら

お母ちゃーん!

今 何日なんやろう?

節子

またか

うん?

あぁ

なんやこれ?

ほっとけ ほっとけ 捨てといたらええのや

うん?

こっちのヤツも もうじき いてまいよるで

目ぇ ポカッと 開けてるようなったら あかんわ

1945年6月5日 神戸

退避! 退避! 退避してください

坂巻さん ごくろうさんです

敵さん 大編隊らしいでんな

こないだみたいな爆撃やったら 消防裏の壕が一番 安全やろ

二回も やられとるんやから 今度はどっか他所のところとちゃうの

暑いわあ

ええ子やろ しんぼうするんよ

アアーン

ほな 一足先に壕に いかしてもらうからね

あんたらも気ぃつけて 早おいでよ

節ちゃん お兄ちゃんの言うこと ようきくんよ

お母ちゃん そんなことええからはよ出な!

ハイハイ

あっ お母ちゃん薬もった?

ハイハイ もちました

防空壕いややなぁ

そないなこというとって 爆弾で ぶっとばされても しらんで

早う おぶさり

あー お人形

えっ?

退避!

兄ちゃん

あっ

伏せんとぅ

アーッ

あっ

いやっ

あぁ

うわぁ

あぁ 兄ちゃん 兄ちゃん 兄ちゃん

あぁ 兄ちゃん

押さんといて つぶれてしまうがな!

キャー

あっ 早う急がんかい!

アーッ!

早うしい いい加減 みんなもう 行きはりますさかい

お父さんアレも 忘れンと 早う!

天皇陛下 バンザーイ

心配あれへん ここやったら大丈夫や

お母ちゃん どこいった?

防空壕にいてるよ

消防裏の壕 250キロの直撃かて 大丈夫いうとったもん 心配ないわ

お母ちゃん きっと二本松駅に来てるわ

二本松で落合うはずやから

もうちょっと休んでから行こ

体なんともないか 節子

下駄ひとつ あらんようになった

エッ 兄ちゃん買うたるよ もっとええのん

うちも お金もってるねん

これあけて

節子は金持ちやなあ

ウフッ

あー?

これが空襲の後で降るいうヤツか

ああ…!

キャ

えらいきれい サッパリしてしもたなあ?

見てみ あれ公会堂や

兄ちゃんと雑炊食べにいったやろ

おうち 焼けてしもたん?

そうらしいわ

どないすんの?

お父ちゃん 敵とってくれるて

お母ちゃん お母ちゃん!

うちだけが焼けなんだら そりゃもう 肩身が狭いやろうなあ

ハハハハ 焼けてサッパリしたわ

まあ 無事で何よりやったなあ

直撃2発おちよってん

ムシロかぶせてほったろか思てもな 油脂こぼれるやろ

どないもこないも ならへんわ

違うわ おばちゃんやないわぁ

兄ちゃん オシッコ

よっしゃ

上中 上西 一里塚の皆さーん!

国民学校へ集合して下さーい 救護所がありまーす

どないした?

目ぇ 痛いねん

こすったらあかん

学校いったら洗うてくれるよ

お母ちゃん どないしたん?

学校におるわ

ガッコウ?

― そや 早いこ ― うん

泣いたらいかんよ おりこうさんやからね

清太さん!

清太さん お母さんに会いはった?

けがしはったのよ はよ行ったげな

うち見てたげる

怖かったねえ 節ちゃん 泣かんかった?

うん

お兄ちゃん ご用があるから ちょっと待っとろね

ウアーッ

ああ 清太くん 探してたんや 元気やった?

お母ちゃんは?

こっちや

これ お母さんのや

エーッ!

こっち こっち

今ようやく 寝はったんや

どっか病院あったら 入れた方が ええねんけどな

きいてもろてるねん

西宮の回生病院は 焼けんかったらしいけどな

あの…

お母ちゃん 心臓わるいんですけど その薬もらえませんか

ああ 聞いてみような

ほな また来るから

お母ちゃん

わかった?

はあ…

お気の毒やねぇ

のどかわいた

何かできることあったら いうてちょうだい

そや 乾パンもう もうろた?

ほな 取ってきてあげるわ

この指輪 財布へ なおしとき

なくしたらあかんで

お母ちゃん ちょっとキイキ悪いねん

じき ようなるよってな

どこにおるのん?

病院や 西宮のな

そやから 今日は 学校へ兄ちゃんと泊まって

明日 西宮の おばちゃん知ってるやろ

池のそばの

あすこへ行こ

なっ?

うちら2階の教室やねん みんな居てるから来えへん?

すみません ぼくら 後でいきますさかい

ほな あとでな 節ちゃん

食べるか?

お母ちゃんとこ いきたい

明日ならな もう遅いやろ

見てみ 兄ちゃんうまいで!

包帯はとれないな 見ない方がいいよ 遺体は

なんせこの陽気ではなあ?

今日からでもトラックで運ばな

妹さん どないしたんや?

西宮の遠い親せきに 今朝あずけてきました

焼けだされたら 置いてもらうことになっとったから

そうか そらよかった

ほな 私は任務があるさかい これで… 元気でな

お母ちゃん!

お母ちゃんは?

お母ちゃん まだキイキ痛いのん?

うん 空襲で けがしはってん

おかえり

お母さんどないやった? 回生病院?

はあ…

海軍さんはええわ 疎開荷物かて トラック使うて運ぶんやから

あと 蚊帳と布団は三畳に 出してあるさかいな

すみません

お母ちゃん もう指輪 せえへんのかな

節子に くれはったんやろか

それ大事なんやから しもうとき

お母ちゃんなあ…

お母ちゃん もうちょっと ようなったら一緒に見舞いにいこうな

うん

もう遅いからお休み

うん…  

あぁ ニシンにカツオ節 干し芋に卵

それに梅干

いやー これバターやないの

非常時いうても あるとこにはあるもんや

軍人さんばっかりぜいたくして

それで 清太さん 病院よって来はった?

先のことも相談せんならんし 節ちゃん連れて―

いっぺんお見舞いに 行ってこんならん 思とるんやけど

あかんかったんか?

お母ちゃん 学校で死んだんです おとつい

なんやて 死にはった?

そんならそうと 何ですぐに いうてくれはらへんかったん

水くさい子やなあ

節子に知られとうなかったんです

死にはったんか…

えらいこっちゃ

すぐ お父さんに手紙書いて知らせんと

アハハハ

あっ 兄ちゃん!

お姉ちゃんに下駄 買うてもろた

よかったな節子

おかえりなさい

よーし

アーッ

ハハハハ

大変やねえ あんたらも

ありがとうございました

なんなん あの音

あー 食用蛙や 怖いことあれへん

あっ ホタル!

アーッ

ほら つかまえてみ

うわぁ

えっ? あー!

あーあ つぶれてしもた

なんや へんなにおい

ギュッと握るからや

あっ?

うわあ

ぎょうさんおるなあ ホタルが

そや節子 眼つむってアーンしてみ

なんでや

なんでもええから アーン

アーン

ロオップ! うーん

ロオップ ロオップ ロオップ

ロオップ ロオップ

もうちょっとで のみこんで しまうとこやった

ハ… ハハハハ

ただいま

遅かったやないの

おばさんに ちゃんと お礼いうたやろな

はい

うまそうやなぁ

清太さん あんた 学校どないなっとるの?

いかんでええの?

はあ 動員行っとった神戸製鋼は 爆撃でメチャメチャやし―

学校も焼けてしもて… 行ってもしょうがないんです

へえ

お父さんには 手紙書いてくれたんやろな

出しました 呉鎮守府気付で

いつ?

ここへ来て すぐですから もう10日以上も前です

おかしいなあ

こっちへもまだ返事がこんのや

ハサミ 使うたら返しとかなあかんよ 節ちゃん!

戦局はどないですの?

ますます あかんらしいですわ

空襲で焼けてしもた分だけ 他の工場に シワヨセが来ますやろ

本土決戦に備えて増産に励めの 一点張りですわ

そうやろなあ 食料の配給かて 悪うなるばっかりやし

戦地の兵隊さんだけやのうて みんな大変ですなあ

こいさんも お国のための 勤労動員やもん

ようけ食べて 力つけてもらわんと

またや

あんたとこも 二人も焼きだされて 大変やなあ

そやけど まだ小さいのに かわいそうになあ

どないした あせも かゆいんか?

あつい! 防空壕 いやや

我慢せなあかん 兄ちゃん おるから こわないやろ

海 行ってみよか?

うん いこいこ 海!

わあ みんな畑になって しもうとるわ

うわーあ

ヨッ

何しとるん?

潮水くんどるんや

塩もショウ油も 配給だけやと足りんのやて

ふーん

節子 はよ裸になりっ

ウウーン

ちょっと冷たいかもしれんな

キャー 冷たい

気持ええやろ アセモのとこ

うん

大きな おふろや

コラーッ

ウォーッ

まてー

ウォーッ まてー

熊やどー 食うてまうぞー ウォー

キャー

あっ!

チョッキン チョッキン チョッキンナ

チョッキン チョッキン チョッキン…?

どないしたん? ねてはるわ

そんなん見んでもええよ

もうちょっと 暑なったら泳げるわ 教えたる

泳いだら おなかへるやん フフフッ  

泳いだら おなかへるやん

清太さーん

節ちゃーん おいでぇ

おなか すいたやろ カルピスも 冷えてるよー

あっ!

いや お母ちゃん 待ちはった?

いや ほんまよう来てくれはったわ

それでおまえ 元気やったんか

へぇ うちは元気や

みんな ようしてくれはるし 心配あらへん

おなか すいたわ

さあ立ち はよ帰らんと空襲くるで

つかれたわ 兄ちゃん おんぶ

待避!

お母さんの着物なあ いうては悪いが もう用もないんやし―

お米に換えたらどう?

おばさんも前から少しずつ 物々交換して足し前してたんよ

これで一斗にはなる思うよ

一斗!

清太さんも栄養つけな

体丈夫にして 兵隊さん行くねんやろ

一斗になるんですか?

このまま置いとくより その方がきっとお母さんも喜びはるわ

ほな ちょっと行ってくるさかい

あかん!

なんや節ちゃん 起きてたんかいな

お母ちゃんのオベベ あかん!

あかん あかん! お母ちゃんのや

節子 はなしや

いやや いやや いやや!

節子?

いやや いやや いやや! エエーンッ

いやや いやや!

うわぁ

ええ お米やろ

晩はこの白い御飯 炊くさかいな 節ちゃん

はい これは あんたら持っててや

白いゴハンやで 節子

おいっ

ハイ

こいさんも 兄さんも残業やさかい

せっかくの温い御飯が 食べられんで 気の毒やわ

おいしいなあ やっぱり白いゴハンは

おかわり

ハイハイ

節ちゃん 白い御飯やと よう食べるなあ

うん 好きやもん

どないした

雑炊 いやや

ぼくの もって来た梅干 もうないんですか?

そんなもん とうに のうなったやないの

ハイ お弁当

ほな もろてきます

ごくろうさん

― ほな 行ってくるわ ― 気つけてな

見てみ 昼はオムスビやから 雑炊 がまんして食べ

ええ加減にしとき! うちにおるもんは昼かて雑炊や

お国のために働いてる人らの弁当と 一日中 ブラブラしとるあんたらと

なんで おんなじや思うの

清太さんな

あんたもう大きいねんから 助け合いいうこと考えてくれな

あんたらは お米ちっとも出さんと

それで御飯 食べたいいうても そらいけませんよ

通りません

ちょっと つづけて ご飯 食べさせたったら

まあ 口が肥えてしまいよってからに!

そやかて あれうちのお米やのに

なんや そんならおばさんが ズルイことしてるいうの

えらいこというねえ

みなしご 二人あずかったって そう いわれたら世話ないわ

よろし

うちと あんたらと 御飯 別々にしましょ

それやったら文句ないでしょ

それでな清太さん あんたとこ 東京にも親せき いてるんでしょ

お母さんの実家で なんやらいう人 おってやないの?

手紙出したらどう?

この西宮かて いつ空襲されるか わからんよ

そやかて 住所わからへん

早う おうちかえろ

そやね お父ちゃん 待っとるもんね

カエルが なーくかーら かーえろ フフフッ

かんにん かんにん 順番えらい待たされてしもた  

どないしたん?

おなかへった ノドかわいた

よっしゃ

ほら ドロップなめ

お母ちゃん 銀行に 七千円も貯金しとったんや

七千円やで あんだけあったら なんとでもやってけるわ

もう心配あらへん

お父ちゃんになあ

“はよ返事ください 節子が待ってます” いうて書いてるんや

あんたらは運がええ

今どき こないな七輪 なんぼ金出したかて手に入らへんで

きょうびは売ろうにも品物がのうて 商売あがったりや

特に金物はあかん どっこにもないわ

あの黄楊のクシと それから…

番傘ないですか?

傘は ないなあ

あっ そや

雨 雨 ふれふれ 兄ちゃんが

じゃのめで おむかえ うれしいな

ピゥチピゥチ チャゥプチャゥプ ランランラン

― うまいやろ 兄ちゃん ― うん

火の始末だけは 気ぃつけてや

ハーイ

どないしたんです あのふたり

今日から自分らで自炊するんやて

ほおー そりゃまた けなげなこってすな

おかわり

お母ちゃんまた キツイこというたんちゃうの?

そやけど ごめんなさいの ひとことも のうて

七輪から何から 買うて来てからに まるでアテツケや

ゴッツォーさん

フッ あー

牛になるよ 兄ちゃん

ええよ そんなに きちんと座らんでも

はい 二人分な

これだけ?

ああ 次の配給は 7月に入ってからになるやろ

ウェーン エンエン

ウェーン エン

うちがやるぅ

あまいか?

ハァー

味が いっぱいする

ブドウ イチゴ メロン ハッカ ぜんぶ入ってるもんな

節子 みんな飲んでええわ

ハァー 飲んでしもうた

あれあれ 片付けもせんで寝てしもて

勝手なことばっかりして

ほんまに あの子らにはカワイゲ いうもんがないんやから

ウェーン エンエン

またや

お母ちゃん…

清太さん こいさんも兄さんも お国のために働いてるんでっさかい

せめてあんた 泣かせんように したらどないやの!

毎晩 毎晩 警報で ええかげん みんな寝不足になっとるいうのに

うるそうて 寝られへん

カーラースー なぜ鳴くの

カラスは山にー

アアーッ

中部 軍勧告情報!

敵 数目標は 現在 旧水道を北上しつつあり

清太さん また横穴いくんか

あんたの年やったら 隣組の 防火活動するんが当たり前やないの

警報解除!

おうち かえりたいわあ

おばさんとこ もういやや

おうち 焼けてしもたもん あれへん

ホニハーニー ホーイートー

ホホホー ニハニー はい

屋根よーり 高い コイのぼり

大きなマゴイは お父さん

よしなさい!

この戦時中になんですか 怒られるのは おばさんさんですよ

非常識な

ほんまに えらい疫病神が まいこんで来たもんや

空襲いうたって 何の役にもたたんし

そんな命 おしいのやったら 横穴に住んどったらええのに  

あんなぁ

ここ おうちにしようか?

ここやったら だれも けえへんし―

柱も太いし 節子と二人だけで好きにできるよ

うちらの おうちにして ええのん?

うん

あっ!

えらい長いこと お邪魔しました ぼくら よそへ移ります

よそて… どこ行くの?

まだ はっきりしてませんけど

はあ…?

ほなまあ 気ぃつけてな

節ちゃん さいなら

アハハハ ここが 台所

こっちが玄関

ハバカリは どこにするのん?

ええやんか どこでも お兄ちゃん ついてったるさかい

ありがとうございました

そこらへんに置いといてや

あの ワラもう少しと…

何か オカズになるようなもん 売ってくれませんか?

ああ ええよ あるもんしか ないけどな

うん?

あっ

そら!

ワーッ

わあ ツバが出るう

腹へったあ

とれたら あれも食える はずなんやけどな

カエル?

うまいんやて

フーン

節子 あとはええから 蚊帳に入っとり

どないした?

歯ブラシ 忘れて来た

ええやんか 一日ぐらいせんでも

こらっ 蚊にくわれるやないか 蚊帳に入っとらな あかん

まっくらやし こわい

兄ちゃん ションベン行くけど 節子もするか

うん

あれ 特攻やで

ふーん ホタルみたいやね

そうやなあ

そや ホタル つかまえよか?  

ほら 入って

ウフフフフ

あー 兄ちゃんの顔みえた

節子の顔もや

あっ

あっ! かんざし

ワアーッ

よーし ホタルの光 窓の雪や

うわぁ

兄ちゃんな 節子の生まれる前 観艦式みたことあったんや

カンカンシキ?

そや お父ちゃん 巡洋艦 摩耶に乗ってな

連合艦隊 勢ぞろいやで

守るも 攻むるも くろがねの 浮かべる城ぞ たのみなる

敵機来襲! ババババ ババババ

お父ちゃん どこで戦争しはんのやろな

ううーん 苦しいやん 兄ちゃん

― なにしとんねん? ― お墓 つくってんねん

お母ちゃんも お墓にはいってねんやろ

うち おばちゃんに聞いてん

お母ちゃん もう死にはって お墓の中にいてるねんて

いつか お墓いこな

節子 覚えてへんか 布引の近くの墓地いったことあるやろ

あすこに居てはるわ お母ちゃん

大きな樟の木の下の…

何でホタル すぐ死んでしまうん?

ハハハハ ハハハハ

なんや こんなとこ だれか住んどるで

焼けだされかいな

シーッ こわいおっさん 出てくるんちゃうか

あぁ いっちょまえに これブランコやで

子供がおるんや

なんやあ?

ナンマイダ ナンマイダ

これが本物やったらなあ

あー “セツコ” セツコやて

みてみー これカエルの干物や

えらいもん食うとるなあ

疎開いっとる タッちゃんやケン坊も こんなもんばっかり 食うとるんやろか

オエッ ひきわり大豆ばっか うちの雑炊より あかんわ

ウワー オバケが出たあ ウワー ハハハハ

あっ 待てー

それに お母さんの着物も みんな米とかえてしもて―

もうあらへんのです

おじさんとこなら前に お金でいろいろ…

着物とかお金とか そんなこと いうとるんやない

うちは農家やいうても そうそう人に 分けられるほどは作っとらんのや

それより あんたら ほかに身よりは?

それが 連絡つかへんのです

それやったら やっぱりあの家へ おかして もろた方がええ

だいいち 今は何でもかんでも配給やし

隣組に入っとらんと暮してはいけん

なっ よう あやまって あすこへ置いてもらい

すんませんでした よそを あたってみますよってに

あんたも海軍さんの息子やろ しっかりせな あかんで

オーイ!

ええのん?

うん うん…

うわっ

あっ!

あかん!

大豆でもコーリャンでも 好き嫌い いうたらあかん

ようけ食べな 大きゅうなれへんで

兄ちゃん

うん?

うち… うちな おなか おかしいねん

冷えたんか

もうずっと ビチビチやねん

コノヤロー!

堪忍してください!

すんません 堪忍してください ウッ

妹 病気やから サトウ汁 飲ましてやりとうて

なにぬかす! 戦時下の野荒しは重罪やねんど

このガキャー

コラッ 待たんかい!

こら なんや! こないな ちっこい芋まで掘りくさって

この辺の畑荒しとったんは お前やな

兄ちゃん!

すんません 堪忍してください もうしませんよってに

すんませんで済むのやったら 警察はいらんわい

サッサと歩かんかい ブタ箱入りじゃ

― 兄ちゃん 兄ちゃん! ― 妹 ほんまに病気なんです

僕おらなー どうにもなりません

兄ちゃん 兄ちゃん!

兄ちゃーん!

兄ちゃん 兄ちゃん…

事情はようわかった この件は 犯人説諭 および調書作成の上―

善処するよってに ひきとってよろしい

そっ そやけど

こんだけ殴りゃ 気が済んだやろう

未成年に対する暴行!

傷害!

ほっ ほな よろしゅう頼まっさ

今夜の空襲 福井やったらしいなあ

まあ奥で 水でも一杯飲んだらどうや

節子…

兄ちゃん!

兄ちゃん

どこ痛いのん? いかんねえ お医者さんよんで 注射してもらわな

節子!

兄ちゃん ハバカリ行きたい

そこまで我慢できるか?

うん

おぶさり

オニイサンは ヤマへ シバカリに オバアサンは…

早うー 早う  

節子 飯にしよっ

今日のカボチャうまいで

見てみ ほんまのヨーカンみたいやろ

うち ヨーカンきらいや

何いうてんねん

節子 食べんかったら兄ちゃん お父ちゃんに怒られるやんか

さっ 兄ちゃん食わしたるさかい 元気だして食べ

ようけ食べて 早うようなって また 一緒に海行こ

やれやれ ワーイ

パーン!

ハハハハ ハハハハ

こんどこそ うまいもん 食わしたるで 節子

兄ちゃん?

兄ちゃん?

お母ちゃんの形見やて これが?

アホ こんな安もんのペラペラが なんで形見やねん

ええ加減にしとき!

あっ…

節子…

節子!

節子!

兄ちゃん お水…

うん

息 吸って

吐いて

それから…もう何日も 下痢がとまらないんです

湿しんもアセモやないみたいやし

潮水で洗うと しみて痛がるだけなんです

栄養失調からくる衰弱ですな

下痢も そのせいだ

ハイ 次の人

何か薬とか注射とか?

注射 いやや

とにかく何か手当てしてください お願いします

薬も なんも

まっ 滋養をつけることですな それしかない

滋養いうても…

どうしました?

滋養なんか どこにあるんですか!

腹へったなあ

なに食べたい?

天プラにな おつくりにな ところ天

もうないか?

アイスクリーム

それから…

またドロップ なめたい

ドロップかあ

よっしゃ

貯金ぜんぶ おろしてくるわ 何か ええもん買うてきたる

うち なんもいらん おうちに おって兄ちゃん

行かんといて 行かんといて

行かんといて

心配せんでもええよ 節子

今度 貯金おろして お米や滋養のあるもん買うたら

もうどこへも行かへん

ずっと ずっと兄ちゃん 節子のそばにおる

約束や

はい 三千円

台風近づいとるんやて?

アメリカに降参してしもてから

なんぼ神風が吹いたかて あとの祭りやがな アホらしい

降参て? 戦争に負けたんですか?

なんも知らんのか あんた

負けたって本当ですか 日本が? 大日本帝国が?

ああ 無条件降伏やがな

連合艦隊どないしたんや!

あかん あかん

そなんもん とうの昔に沈んでしもて 一隻も残っとらんわい

なんやて!

そんなら お父ちゃんの巡洋艦も 沈んでしもたんか?

それで返事も来なんだか!

そんなこと わしが知るかい!

けったいな子やなぁ

お父ちゃんのアホ!

腹へったー

お父ちゃん

お父ちゃんも死んだ

お父ちゃんも死んだ

お父ちゃんも アーッ

節子 遅うなってゴメン いま白い おかゆさん 炊いたるさかいな

上いったぁ

下いったぁ

あっ とまった

うまいこと かしわも 卵も買えたんやで

それからな… うん?

節子 何なめとるんや

これオハジキやろ ドロップちゃうやんか

今日は兄ちゃん もっとええもん もろて来たんや

節子の大好きなもんやで

兄ちゃん どうぞ

なんや… 節子?

ゴハンや

おから炊いたんも あげましょうね

どうぞ おあがり

食べへんの?

節子!

ほらっ スイカや すごいやろ 盗んだんやないで

ほらっ スイカや

おいしい

待っててや すぐ卵入りの おかゆさんつくるさかい

スイカ ここへ置いとくさかいな

なっ

兄ちゃん おおきに

節子は そのまま 眼をさまさなかった

ハイ 特配の炭 一俵な

子供さんやったら お寺の隅など借りて 焼かせてもらい

裸にしてな 大豆の殻で火つけると うまいこと燃えるわ

そやけど ええ天気やなあ

いやー ちょっとも変わっとらんわ

やっぱり我が家はええなぁ

久しぶりやわ 蓄音機!

懐かしい 景色やわあ  

Mid Pleasures and palaces

though we may roam,

Be it ever so humble

Tere’s no place like home!

A charm from the skies

早うお帰り

seems to hallow us there

Which seek through the world

is ne’er met with elsewhere

Home!

Home,

sweet,

sweet home!

There’s no place like home!

There’s no place like home.

翌朝ぼくは―

ローセキのかけらのような節子の骨を ドロップの缶におさめて 山を降り―

そのまま壕へは戻らなかった

兄ちゃーん

もう 遅いからおやすみ

うん  

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